頻度 あまりみない
治療のポイント
・保険診療で認められている治療薬はメベンダゾールのみであるが,難治例ではアルベンダゾールやイベルメクチンも使用する.
・メベンダゾールの単回投与治療は効果が不十分である.
・駆虫の約1か月後に便検査を実施し効果判定を行う.
◆病態と診断
A病態
・鞭虫症は土壌伝播蠕虫であるTrichuris trichiuraの感染が原因である.近年,日本国内における感染事例の報告はないが,流行地からの移住者における報告がある.
・農作物や環境を介して経口感染する.虫卵は土壌中で15~30日間かけて成熟して初めて感染性を有する.未成熟卵がヒトからヒトへ直接感染することはない.
・成虫の体長は約4cmで,腸管内に寄生する.少数の感染では無症状の場合もあるが,多数感染では消化器症状や貧血を認める場合がある.
・鞭虫の雌虫は感染から約2~3か月後に産卵を始める.雄虫の単性寄生では虫卵は検出されない.成虫の寿命は1~3年である.
B診断
・糞便の直接塗抹または集卵法で虫卵を検出する.
・下部内視鏡検査で大腸粘膜に刺入した虫体を認めることがある.摘出した虫体または,虫体から得られた虫卵で診断が可能である.
◆治療方針
保険診療で認められている治療薬はメベンダゾールのみであり,3日間の内服が推奨される.保険適用外の治療薬として,アルベンダゾール,イベルメクチンがある.
A第1選択薬
Px処方例
メベンダゾール薬錠(100mg) 1回1錠 1日2回 3日間(重症例では5~7日間).体重20kg以下の小児では1回0.5錠(またはそれ以下に適宜減量) 1日2回 3日間
!注意 メベンダゾールの単回投与は治療効果が不十分なため,避けるべきである.
!不適切処方 メベンダゾール錠は妊婦には投与しないこと.授乳婦に投与する場合には授乳を中止させること.また,過量および長期投与(3週間~)では薬剤性肝炎や無顆粒球症