今日の診療
治療指針

蟯虫症
enterobiasis
大西健児
(鈴鹿医療科学大学教授・保健衛生学部救急救命学科内科・感染症学)

頻度 割合みる(2015年の推定で10万人対22人)

治療のポイント

・日本ではピランテルパモ酸塩が第1選択薬である.

◆病態と診断

A病態

・蟯虫は雌雄異体の小型線虫(成虫の雌と雄がそれぞれ8~13mmと2~5mm)で,世界中に広く分布する.経口的に摂取された幼虫内蔵卵が十二指腸腔内で孵化し,幼虫は小腸を下降して盲腸で成虫となり寄生する.

・雌成虫は大腸を下降し肛門から体外へ出て,肛門周囲の皮膚面へ産卵する.

・無症状のこともあるが,肛門周囲の瘙痒感を主症状とする症例が多い.乳幼児では不機嫌や不眠があり,さらには瘙痒感による掻破に起因するびらんが認められる症例がある.

・感染者の手指,寝具,下着などを介して室内に散布された虫卵が,塵埃とともに消化管に取り込まれて感染する経路も想定されており,家族内感染が成立する原因の1つと推測されている.

B診断

肛門周囲瘙痒感を訴える患者では,必ず考慮しなければならない疾患である.

・柿の種状の形態を示す虫卵を検出して診断する.虫卵内に幼虫を認めることも多い.肛門周囲の皮膚に存在する虫卵を検出するため,セロファンテープを早朝排便前に肛門周囲に粘着させ,その後にスライドグラスにそのテープを張り付け顕微鏡で観察する.専用の検査用テープがある.

・複数回の検査を行えば,1~2回の検査に比べ虫卵検出率は向上する.

・感染者や家族が持参した虫体を観察して診断することもある.

◆治療方針

 保険承認されているピランテルパモ酸塩が第1選択薬である.ピランテルパモ酸塩で初回駆虫に失敗した場合,再度ピランテルパモ酸塩で治療を試みる(2クール目).それでも効果不十分の場合は,メベンダゾールあるいはアルベンダゾールを使用するが,この両者は保険適用外である.上記のいずれの薬剤も初回投与2週間後に,同じ薬剤の再投与を行うことで治癒率が向上することが知られている.なおこれらの薬剤は妊婦や2歳

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