頻度 あまりみない
◆病態と診断
Aリンパ系糸状虫症
・リンパ系糸状虫症は,糸状虫(フィラリア)成虫がリンパ系に寄生して引き起こされ,一般的には象皮病や陰嚢水腫としてよく知られている.
・世界中で5,140万人が感染していると推定される.
・ヒトのリンパ系に寄生する糸状虫としては3種類が知られており,いずれも蚊によって媒介される.
・バンクロフト糸状虫は広く世界に分布し,全体の約90%を占める.マレー糸状虫は東南アジアやインドに分布し,約10%を占める.チモール糸状虫はインドネシア,東チモールの限られた島々に分布する.
・リンパ管拡張による慢性的なリンパ液の灌流障害の結果,リンパ系が障害される.
・特徴的症状は熱発作,リンパ浮腫,乳び尿,陰嚢水腫,および象皮病である.マレー糸状虫症では,通常,乳び尿と陰嚢水腫がみられない.
・熱発作は,①虫体成分に対する生体反応と,②皮膚バリアの破綻に起因する細菌の重複感染によるものの2種類があり,頻度としては圧倒的に後者が多い.熱発作を繰り返すうちにリンパ浮腫が進行し,さらに皮膚が増殖・硬化すると象皮病とよばれる.
・日本はかつて濃厚な流行地であったが,1980年頃までに制圧に成功した.
・一部の例外を除き仔虫(ミクロフィラリア)は夜間末梢血中に出現するので,ミクロフィラリアの検出・同定を目的とした採血は午後10時過ぎに行う.
・夜間採血を要しないイムノクロマト法による検査もよく用いられる.
Bオンコセルカ症(河川盲目症)
・オンコセルカ(回旋糸状虫)に感染したブユが媒介し,99%はサハラ以南のアフリカに分布する.
・フィラリア成虫は皮下に寄生してミクロフィラリアを産み出す.しばしば皮下腫瘤を形成する.
・眼や全身の皮膚に分布するミクロフィラリアが病態の主体である.
・全身の皮膚に分布するミクロフィラリアによって間断なく続く激しい瘙痒が出現する.慢性化すると皮膚萎縮や脱色