今日の診療
治療指針

アニサキス症
anisakidosis
所 正治
(金沢大学准教授・国際感染症制御学)

頻度 割合みる

治療のポイント

・海産魚類やイカなどの生食が原因となる.病因探索には発症の10日程度前までの摂食歴の聴取が望ましい.食品衛生法の食中毒病因物質である.

・魚介類の生食後数時間で悪心・嘔吐,心窩部痛をみる急性腹症,胃アニサキス症が最多であり,内視鏡検査による虫体確認・除去が有効である.

・腸アニサキス症は,腸閉塞症状で発症するが保存的治療で対応可能.ただし,まれに腸管壁の高度浮腫,腸穿孔をみるため,開腹手術の備えは必要である.

・通常の魚介類のアレルギーにはアニサキスアレルギーが含まれ,時にアナフィラキシー症状をきたすこともあり要注意である.

・腸管外で死滅したアニサキス幼虫を中心に炎症性の肉芽腫が形成され,病理検査により虫体が検出されることがある(腸管外アニサキス症).

◆病態と診断

A病態

・アニサキス症は,魚介類の生食を介して人体に侵入した幼線虫(アニサキス属またはシュードテラノバ属)の消化管上皮刺入および組織移行を原因とする寄生虫病であり,寿司の世界的普及によって日本ばかりでなく海外でも症例が増加しつつある.食品衛生法の食中毒病因物質に指定され例年約300件の届出があるが,レセプトデータでは年間7,000件程度の報告がある.

・ヒトは本寄生虫にとって好適宿主ではない.このため,アニサキス幼虫は生育することなく人体内を移動し最終的に死滅する.アニサキス症の病態にはアレルギー反応が関与するためアニサキス幼虫への曝露が問題となる.原因魚介類はサバ,アジ,イワシ,カツオ,アンコウ,サケ,イカである.即時型ばかりでなく遅延型の発症もありうることから,病因探索には発症の10日程度前までの摂食歴の聴取が望ましい.

・病型は,幼線虫が消化管内にとどまる消化管アニサキス症と,腸管外まで移行した腸管外アニサキス症,さらに虫体および分泌成分に対するアレルギーの3型に分類される.

1.消化管アニサキ

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