頻度 あまりみない
治療のポイント
・排出された虫体を観察することで条虫の種類が判別しやすくなる.
・いずれの条虫症でもプラジカンテルが治療薬となる.
・有鉤条虫症では虫卵を保有する虫体が腸管内で破壊され,有鉤嚢虫症を起こす可能性があるため,下剤を併用し虫体をすみやかに体外に排出することが望ましい.
・可能ならば排泄された虫体を確認し頭節も排出されているかを確認する.
◆病態と診断
A病態
・ヒトを終宿主とする消化管寄生条虫には,日本海裂頭条虫,クジラ複殖門条虫,無鉤条虫,アジア条虫,有鉤条虫がある.最も多いのは日本海裂頭条虫である.
・渡航歴や摂食歴を問診することが重要であり,国内でみつかる無鉤条虫症や有鉤条虫症はほぼ渡航歴がある患者である.
・魚や肉などに含まれる幼虫を経口摂取することで感染が成立する.
・ヒト-ヒト感染は発生しない.
B診断
・自覚症状に乏しく,虫体が肛門から排出されたことを契機に受診する例が多い.
・食物残渣や消化管粘膜を条虫と思い受診する例も多く,排出された虫体か便の塗抹検査で虫卵を確認することが望ましい.
・採血や画像検査では診断ができない.
・虫体の形態を見て種の診断を行うが,近年は研究施設などでの遺伝子診断も用いられている.
◆治療方針
消化管寄生条虫症はプラジカンテル単回投与で治療ができる.妊娠中の投与に関する安全性は確立されていない.
A有鉤条虫以外の条虫症
Px処方例
プラジカンテル(ビルトリシド薬)錠 1回10mg/kg 空腹時 単回投与保外
B有鉤条虫症を疑う場合
中枢神経に有鉤嚢虫症がある場合,潜伏している嚢虫症の症状(けいれんなど)が悪化する可能性があるとされる.海外の流行地(ブタを身近に飼い,多く食べる地域)に居住していた患者の条虫症の治療では,頭部画像評価や虫体の種を診断してから治療することが望ましい.
1.駆虫前日
低残渣の食事をとるように指導する.
Px処方例 下
関連リンク
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