今日の診療
治療指針

有鉤嚢虫症,マンソン孤虫症
cysticercosis cellulosae hominis and sparganosis mansoni
吉川正英
(奈良県立医科大学教授・病原体・感染防御医学)

頻度 あまりみない

Ⅰ.有鉤嚢虫症

◆病態と診断

A病態

・成虫(有鉤条虫)は小腸に寄生し,本症はその幼虫(有鉤嚢虫)の感染症である.

・成虫感染者の糞便とともに虫卵が外界に出て,この虫卵をヒトが経口摂取すると,小腸内で六鉤幼虫が遊出し,腸管壁へ侵入して血行性に全身臓器に運ばれ嚢虫を形成する.

・成虫感染者では体節崩壊により腸管内で虫卵が遊離し,有鉤嚢虫症となることもある(自家感染).

・嚢虫形成は,筋肉・皮下,脳,眼などさまざまな部位に生じ,腫瘤形成,意識障害・けいれん,視力障害などの症状として現れる.

B診断

・摘出した嚢虫や組織の病理診断あるいは遺伝子診断に拠る.

・脳有鉤嚢虫症は,CT/MR画像と血清あるいは脳脊髄液中の抗体陽性を確認して診断する.

◆治療方針

 抗寄生虫薬の投与にあたっては,まず成虫の腸管寄生がないことを確認する.病巣摘出が困難な場合は,早期病巣であれば薬物治療を行う.陳旧性病巣に対して

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