頻度 あまりみない
治療のポイント
・本症は現在日本国内には土着しておらず,流行地の湖沼・河川など(淡水域)での水への接触が感染の契機となるため,海外渡航歴と行動歴の聴取が重要.
・10年以上流行地での淡水への接触がない場合は原則的に陳旧例とみなし,駆虫(プラジカンテル投与)は不要.
◆病態と診断
・虫種ごとの特徴・診断方法を図に示す.
・潜伏期間は数週間~3か月程度.
・病態は虫卵結節(虫卵肉芽腫)の形成およびそれに付随する組織の破壊・2次感染,潰瘍形成や増殖性炎症,線維化が原因.まれに虫卵が中枢神経や肺循環に移行することで中枢神経症状や肺高血圧症を引き起こす.
・診断は虫卵(ビルハルツ住血吸虫は尿中,その他は糞便中)の確認が原則.補助的に血清抗体価の測定も研究室レベルで可能であるが,現在の感染なのか陳旧性なのか断定が難しく,過去の感染リスク行為歴などを参考に判断する.
◆治療方針
駆虫薬プラジカンテルは成虫にのみ有効である.つまり体内移行期の幼虫(感染初期)や10年以上新規感染がない場合(成虫の寿命は約3~7年)は投与不要な場合が多い.
慢性症状に対してはそれぞれ支持療法や形成手術などを検討する.
Px処方例
プラジカンテル(ビルトリシド薬)錠(600mg) マンソン住血吸虫,ビルハルツ住血吸虫:40mg/kg 食後 単回.日本住血吸虫,メコン住血吸虫:1回20mg/kg 1日3回 毎食後 1日のみ保外
!不適切処方:リファンピシンの併用 プラジカンテルはCYP3A4により代謝される.リファンピシンによりCYP3A4が誘導され血中濃度の低下につながる.その他のCYP3A4を誘導または阻害する薬剤の併用にも注意が必要である.
■看護・介護のポイント
・感染管理は標準予防策で対応する.患者の糞便や尿などの虫卵を含む検体,および血液にヒトへの感染性はない.
文献
1) Farrar J, et al :