頻度 情報なし
治療のポイント
・寄生虫疾患の診断においてはまず疑うことが重要である.寄生虫疾患は末梢血好酸球増多をきたすものが多く,そのような際には寄生虫疾患が蔓延している地域での居住や渡航歴,寄生虫感染リスクの高い食材や料理の摂取,ペット飼育や家畜の有無などの詳細な問診が大切である.
Ⅰ.肺吸虫症
◆病態と診断
A病態
・肺吸虫の中間宿主であるモクズガニやサワガニなどの川ガニを加熱が足りないなどの不十分な調理で摂取する,あるいは待機宿主となっているイノシシまたはシカを不十分な調理で摂取することによって感染する.
・経口摂取された幼虫は小腸を貫通して腹腔に入り,横隔膜を通って胸腔内に入る.胸腔内から胸膜を通って肺内へ到達し,成虫となる.
・主な臨床症状は咳嗽,血痰などで,幼虫が胸膜を貫通する際に気胸を生じることがある.
B診断
・診断は喀痰,糞便,気管支洗浄液などで虫卵を証明することで確定する.
・また,抗肺吸虫抗体をELISA法などにより免疫学的に診断することも多い.
◆治療方針
治療には通常,プラジカンテルを用いる.添付文書では1回20mg/kgとされているが,十分に駆虫できない可能性があり,下記処方が望ましい.プラジカンテル内服後に虫体の破壊に伴って放出された内容物によって一過性に発疹やじん麻疹,末梢血好酸球増多をきたすことがある.
Px処方例
プラジカンテル(ビルトリシド薬)錠(600mg) 1回25mg/kg 1日3回 毎食後 3日間保外用量
Ⅱ.肝吸虫症
◆病態と診断
A病態
・肝吸虫の中間宿主である淡水魚(主にコイ科淡水魚でモツゴ,モロコ,タモロコ,ウグイ,フナ,コイなど)を生食することによって感染する.
・経口摂取された幼虫は小腸から胆汁の流れを逆行性にたどって胆管に入り,肝内胆管へ到達後発育し,成虫となる.
・虫体が胆管を閉塞し,胆汁のうっ滞を起こすことで胆管壁やその周囲組織に慢性炎症を生じ