GL酸素療法マニュアル(2017)
ニュートピックス
・2020年以降蔓延しているCOVID-19肺炎のため,酸素療法の需要が高まった.挿管下人工呼吸療法を回避するための治療法として,ハイフローセラピーに注目が集まっている.
治療のポイント
・酸素療法は本質的に対症療法である.低酸素状態に陥った生体の生命維持,呼吸困難症状の緩和のために実施される.
・酸素は至適量を投与・継続すべきである.過度の酸素投与による有害事象が存在することに留意する.
・酸素投与法は低流量式・高流量式・リザーバ式に大別される.高流量式にはハイフローセラピーを含むが,ほかにない特徴を有する.病態に応じた使い分けが肝要である.
◆病態と診断
A病態
・低酸素症に対する対症療法として,吸入気酸素濃度を高めるために適量の酸素を投与する治療法である.
・PaO2≦60Torrとなる低酸素血症を「呼吸不全」とよび,PaCO2 正常(≦45Torr)をⅠ型呼吸不全,PaCO2>45Torrの場合をⅡ型呼吸不全とよぶ.
・PaO2 が正常でも過呼吸など代償的反応の結果の可能性があり,酸素療法の適応となり得る.
B診断・検査
・動脈血液ガス分析(ABG:arterial blood gas analysis)によるPaO2,またはパルスオキシメーターによるSpO2 により評価する.PaCO2 の評価も重要であり,経皮的CO2(PtcCO2)測定やカプノメーターによる測定なども有用である.
・すでに酸素投与中の場合,酸素投与量,投与法も測定条件として記録する.SpO2,呼吸数など経時的に評価し投与量を調整する.
・労作時の酸素需要は個人差が大きい.実態に基づいた運動負荷により調整することが望ましい.
◆治療方針
酸素療法の開始基準として,急性期では①室内気にてSaO2<94%(ただし高CO2 血症を伴う慢性呼吸不全の急性増悪の場合は,SpO2<88%