今日の診療
治療指針

かぜ症候群
common cold syndrome
本田 仁
(藤田医科大学臨床教授・感染症科)

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ニュートピックス

・新型コロナウイルス感染症における症状は上気道感染症のそれと同様であることが多く,SARS-CoV-2はかぜ症候群のなかの重要な起因ウイルスの1つとして位置付けられ,かぜ症候群全体の診断,治療戦略の再考が必要となった.

治療のポイント

・かぜ症候群で注目すべきは,鼻症状(鼻汁,鼻閉),咽頭症状(咽頭痛),下気道症状(咳,痰)の3系統の症状であり,これらは自然軽快することが多く,対症療法が主体となる.

・抗菌薬が必要となる病態はA群レンサ球菌(GAS)による急性咽頭炎と症状が強い急性副鼻腔炎であり,抗菌薬の適正使用が求められる領域である.

・病態,診断名の適切かつ肯定的な説明と,症状が改善しなかった場合の受診を適切なタイミングで患者に促すような治療が,患者満足度を上げ,この分野の抗菌薬適正使用につながる.

◆病態と診断

A病態

かぜ症候群は一般的な概念であり,急性上気道感染症を中心した疾患群である.基本的に臨床診断に基づいており,関連する症状から感冒,急性咽頭炎急性副鼻腔炎急性気管支炎の病型に診断・分類される.

・気道の閉塞をきたすような病態(急性喉頭蓋炎扁桃周囲膿瘍),肺炎などは時にかぜ症候群と類似の症候をきたすことがあるが,治療方針が異なるため常に念頭においておく必要がある.

・かぜ症候群のためには適切な除外診断が実施されることも必要である.過去の研究においても患者が訴える「風邪」という症候にはさまざまなもの(倦怠感や悪寒,戦慄を伴う発熱など)が含まれており,尿路感染症,肺炎,蜂窩織炎などに続発する菌血症を示唆する症候がないか確認が必要である.

B診断

・上記の通り,関連する症状の病歴聴取と診察から,かぜ症候群のなかの具体的な診断名に至る必要がある.むしろ具体的診断名がつきにくい病態においては,かぜ症候群という形で無理やり診断をするべきではない

・症状や身

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