今日の診療
治療指針

市中肺炎
community-acquired pneumonia
小宮幸作
(大分大学准教授・呼吸器・感染症内科学)

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GL成人肺炎診療ガイドライン2017

ニュートピックス

・現在,本邦の肺炎ガイドラインの改訂作業が行われているが,医療・介護関連肺炎のあり方が問われている.また,肺炎の診断ではまず新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を除外する方針が考慮されている.

治療のポイント

・肺炎と診断した場合,感染状況を考慮しCOVID-19を除外する.

・入院適応と治療薬を決定するために,敗血症の有無と重症度を評価する.

・細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別は,抗菌薬を選択するうえで重要である.

・原因菌の検索を行い,判明後はより適した抗菌薬に変更することを考慮する.

◆病態と診断

A病態

・肺炎は,肺実質に起こる急性の感染性の炎症である.侵入門戸は主に気道で,吸入または誤嚥によって生じる.高齢者肺炎の多くは,誤嚥を機序に発症する.

・咳嗽,喀痰,呼吸困難や胸痛といった呼吸器症状と,発熱,倦怠感,食欲低下,意識障害といった全身症状がみられる.ただし,高齢者では症状が表出しにくいことがある.

・「成人肺炎診療ガイドライン2017」では,市中肺炎,院内肺炎,医療・介護関連肺炎のそれぞれにおいてシステマティックレビューが行われた.本邦の医療・介護関連肺炎は,米国の医療ケア関連肺炎を参考にしている.医療ケア関連肺炎は,耐性菌保有リスクが高い概念として定義されたが,その後の検証で必ずしも耐性菌を予測しないことが明らかになった.近年,同国の肺炎ガイドラインから医療ケア関連肺炎の概念は削除された.

B診断

・上記の症状に加え,胸部聴診でcracklesを聴取し,血液検査では炎症反応の上昇を認める.胸部X線写真では浸潤影がみられるが,寝たきりの患者では下葉背側に陰影を呈しやすいため検出しにくい.

・重症度は,A-DROPシステムで判定する.A(Age):男性70歳以上,女性75歳以上,D(Dehydration):BUN 2

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