今日の診療
治療指針

院内肺炎
hospital-acquired pneumonia
徳江 豊
(群馬大学医学部附属病院診療教授・感染制御部)

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GL成人肺炎診療ガイドライン2017

ニュートピックス

・耐性菌治療薬として,抗緑膿菌活性を有する新規のセファロスポリン系抗菌薬であるセフトロザンにβ-ラクタマーゼ阻害薬であるタゾバクタムを配合した注射用配合剤(ザバクサ)と,カルバペネム系抗菌薬であるイミペネム水和物・シラスタチンナトリウムに,新規のβ-ラクタマーゼ阻害薬であるレレバクタム水和物を配合した注射用カルバペネム系抗菌薬(レカルブリオ)が承認された.

治療のポイント

・院内肺炎は入院48時間以降に新たに発症した肺炎と定義され,基礎疾患(特にCOPD・悪性腫瘍)により免疫能や全身状態が不良な患者に生じやすく,多くは高齢者の誤嚥性肺炎が関与する.

・疾患末期,老衰などの終末期状態を判断し,個人の意思やQOLを尊重した治療・ケアを選択する.

・敗血症の有無,生命予後予測因子と肺炎重症度規定因子による重症度分類,耐性菌リスク因子を評価して治療方針を決定する.

◆病態と診断

A病態

・院内肺炎は市中肺炎に比べ耐性菌の分離頻度や死亡率が高い.その病態として,①免疫不全状態,たとえば抗がん剤治療中の好中球減少状態,ステロイドや免疫抑制薬投与による細胞性免疫不全状態,②誤嚥によるもの,③人工呼吸管理によって発症したもの,といった特殊な病態が含まれることが挙げられ,それぞれの病態に応じた適切な対処法,抗菌薬の選択が必要となる.

・院内肺炎では,予後不良の終末期肺炎の像を呈する例や老衰の経過で発症する例も多く,また誤嚥の病態をとることも多いため,抗菌薬治療が生命予後を改善するとは限らない.そのような場合は,患者本人の意思を十分に尊重し,治療の開始,不開始,抗菌薬の選択を複数のメンバーからなる多職種チームで判断することが推奨されている.

B診断

・院内肺炎の診断は診察所見,血液検査所見,胸部X線所見より総合的に判断する.発熱,咳嗽,膿性喀痰の出

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