今日の診療
治療指針

非小細胞肺癌
non-small cell lung cancer
高橋利明
(静岡県立静岡がんセンター・呼吸器内科部長)

頻度 割合みる

GL肺癌診療ガイドライン2021年版―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む

ニュートピックス

・新たに①RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対してセルペルカチニブ,②がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対してソトラシブの使用が承認された.

治療のポイント

・Ⅰ期~Ⅲ期で切除可能な場合には,手術が中心となり,周術期治療(主に術後化学療法)を検討する.

・Ⅱ期で切除不能あるいは手術拒否の場合には,放射線治療を検討する.

・Ⅲ期で切除不能あるいは手術拒否の場合には,放射線治療に加えて化学療法の併用(化学放射線療法)を検討する.

・Ⅲ期で放射線治療が困難な場合やⅣ期あるいは再発の場合には,生存期間の延長と症状緩和を目的に化学療法を検討する.化学療法の際には,腫瘍の遺伝子異常やPD-L1蛋白発現と,患者の状態(performance status,年齢など)に基づく薬剤選択が必要である.

・特に化学療法の適応となる患者に対しては,診断早期から適切な緩和治療の提供が推奨される.

◆病態と診断

A病態

・肺癌の85~90%を非小細胞癌が占め,そのうち腺癌が55~65%,扁平上皮癌が20~25%である.

・腺癌の約70%では癌の発生や増殖,進展に深くかかわるドライバー遺伝子変異が同定されている.

B診断

・治療方針の決定のために,組織診断とともに遺伝子異常やPD-L1蛋白発現の確認が重要である.

・胸腹部CT,脳MRI,PET-CTを組み合わせることで,TNM分類による正確な病期診断をする必要がある.

◆治療方針

 組織診断と病期診断に基づき,患者の状態も考慮し,手術,放射線治療,化学療法,緩和治療を適切に組み合わせて治療を行う.日本肺癌学会の「肺癌診療ガイドライン」が治療方針の決定には有用であるが,年に1度は改訂されるため最新版を参照する必要

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?