今日の診療
治療指針

放射線肺炎
radiation pneumonia
服部 登
(広島大学大学院教授・分子内科学/呼吸器内科学)

治療のポイント

・胸部への放射線照射後に,胸部画像にて新たな陰影の出現をみた場合に発症を疑う.

・典型的には放射線照射野内に発症することから,線量分布図と陰影出現部位を見比べることが重要である.

・高熱や呼吸困難などの明らかな症状を呈する症例が治療対象となる.

・エビデンスの高い治療法はなく,治療対象症例にはステロイド薬が経験的に使用される.

◆病態と診断

A病態

・放射線肺炎は,胸部への放射線治療後に,典型的には照射野に一致して発生する非感染性の肺炎である.

・照射された放射線による正常肺組織の傷害と,傷害された肺組織から産生される炎症性サイトカインによって,主として間質に炎症が惹起される.

・放射線照射外に陰影が出現する場合があるが,その発生機序は放射線の傷害によるものではなく,過敏性肺炎に類似したアレルギー反応であると考えられている.

・放射線照射直後あるいは照射後6か月を経てから出現する場合もあるが,多くは放射線照射終了後1~3か月の間に発症する.

・慢性的に経過し,線維性病変が進行した場合には放射線肺線維症とよばれる.

B診断

・症状として,乾性咳嗽,呼吸困難,全身倦怠感,発熱などを呈することがあるが,放射線肺炎に特徴的なものはない.

・放射線照射開始前の胸部画像所見から照射後に変化を認めた場合に,その発症が疑われる.

・典型的な画像所見は,放射線照射野に一致してみられるすりガラス陰影や浸潤陰影である.陰影が解剖学的構造とは無関係に出現することも,その発症を疑わせる根拠となる.

・近年,強度変調放射線治療や体幹部定位照射など,線量分布が複雑な治療が実施されるようになっており,線量分布と陰影の出現部位を見比べることが重要である.

・KL-6,SP-A,SP-Dなどの間質性肺炎のバイオマーカーの上昇をみる場合が多い.

・感染性疾患や心不全,腫瘍の進展との鑑別は必須である.

◆治療方針

 症状の有無,さらに症

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