今日の診療
治療指針

リンパ脈管筋腫症
lymphangioleiomyomatosis(LAM)
滝本宜之
(国立病院機構近畿中央呼吸器センター・教育研修部長(大阪))

頻度 あまりみない

治療のポイント

・希少難病のため,治療前の診断時に専門病院への紹介を考慮する.

・呼吸機能低下の抑制にシロリムスが有効である.

・厚生労働省の指定難病であり,重症度Ⅱ以上が医療費補助対象であるが,軽症高額該当制度が利用可能である.

◆病態と診断

A病態

・LAMは,妊娠可能年齢の女性に好発する進行性で全身性の難治性希少疾患である.労作時呼吸困難,気胸,血痰,乳び胸水,腎臓や肝臓などの血管筋脂肪腫(AML:angiomyolipoma),リンパ脈管筋腫,乳び腹水,下肢の浮腫などを呈する.

・結節性硬化症(TSC:tuberous sclerosis complex)に発症するTSC-LAMと孤発性LAMに分類される.

TSC遺伝子の異常により生じるLAM細胞が体軸リンパ節やリンパ管を通じて肺で増殖することで,肺組織を障害し,多発性嚢胞を形成し,呼吸不全をきたす.

B診断

・厚生労働省呼吸不全に関する調査研究班診断基準,指定難病認定基準に準じて診断する.

・要点は,LAMに合致する胸部高分解能CT所見(びまん性の境界明瞭な薄壁を有する数mm~1cm大の嚢胞)があり,他の嚢胞性肺疾患を除外することが必須である.病理学的診断でLAM細胞を証明することが望ましい.病理診断に経気管支肺生検は有用である.TSC合併,特徴的な肺外病変(AML,腹部リンパ脈管筋腫,乳び胸腹水)があれば診断は可能である.

・国際ガイドラインでは,血清中VEGF-D(vascular endothelial growth factor D)測定が推奨されている(保険適用外).

◆治療方針

‍ TSC遺伝子変異による恒常的なmTOR(mechanistic target of rapamycin)の活性化が過剰なLAM細胞増殖につながることから,mTOR阻害薬のシロリムスが用いられる.国際ガイドラインでは,呼吸機能の異常

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