頻度 (特発性PAHの発生頻度は100万人に1~2人.厚労省の指定難病に含まれる)
GL肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)
GL特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(IPAH/HPAH)診療ガイドライン(2019)
治療のポイント
・症状は非特異的であり,早期診断には肺高血圧症を疑うことが重要.
・治療には選択的肺血管拡張薬を用い,軽症以外では異なる経路の複数の薬剤を併用する.
・治療には専門的な知識が必要であり,専門施設への紹介を推奨する.
◆病態と診断
A病態
・PAHでは肺動脈の異常収縮とリモデリングによって肺動脈圧が上昇する.進行すると右心不全を呈する.
・血管内皮細胞由来の血管弛緩因子(一酸化窒素,プロスタサイクリン)および収縮因子(エンドセリン-1)の不均衡によって病態が進展する.
・特発性以外に,薬剤・膠原病・HIV感染症・門脈圧亢進症などが原因となる.家族性PAHの原因遺伝子も同定されている.
・発症は妊娠可能年齢の女性に多く,治療薬のない時代は,診断からの平均生存期間が2.8年ときわめて予後不良であった.肺血管拡張薬の開発によって予後は著しく改善したが,治療抵抗例では肺移植を必要とする重篤な疾患である.
B診断
・労作時の息切れ,易疲労感,胸痛,動悸,咳嗽などの症状を呈するが,いずれも非特異的であり,診断確定まで時間を要することも多い.進行例では,失神や右心不全に伴う肝うっ血,下腿浮腫を呈する.
・聴診ではⅡ音肺動脈成分の亢進や拡張期雑音を認める.胸部X線では肺動脈の拡張や左第4弓の突出,心電図では肺性P波・右軸偏位・右室肥大の所見を呈する.
・胸部造影CTや肺血流シンチグラフィーは,呼吸器疾患や慢性血栓塞栓症に伴う肺高血圧症の除外に有用である.心エコーは肺高血圧症のスクリーニングに非常に有用である.
・心エコーで肺高血圧症が疑われる症例に対しては,右心カテーテル検査を行い診断確定
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