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治療のポイント
・胸膜炎の治療は原疾患の治療と対症療法に分かれる.
・大量胸水により呼吸・循環に障害がある場合は,対症療法としてドレナージを行う.
・感染性の胸膜炎の場合は,膿胸への移行に注意しながら画像フォローを行う.
・細菌感染に伴う胸膜炎でキノロン系抗菌薬を使用する場合は結核を否定する.
・悪化する胸水貯留や原因が直ちに判断できない胸膜炎では,専門医へのコンサルトを考慮する.
◆病態と診断
A病態
・肺表面,胸壁,横隔膜や縦隔を覆う胸膜に炎症を生じるのが胸膜炎であり,多くの場合胸水が貯留する.
・感染,腫瘍,自己免疫疾患,消化器疾患,肺循環障害,外傷・医原性やアスベストなどの環境曝露など,原因は多岐にわたる.
B診断
・初期には咳嗽や深吸気で増強する胸痛が特徴的である.
・診察上,少量胸水では胸膜摩擦音が,胸水増加に伴い打診上濁音や肺胞呼吸音消失がみられる.大量胸水では胸郭運動制限も認める.
・片側性胸水では胸腔穿刺による原因検索を積極的に考慮する.肉眼所見,総蛋白,LD,糖,アデノシンデアミナーゼ(ADA:adenosine deaminase),アミラーゼ,ヒアルロン酸,腫瘍マーカー,細菌検査や細胞診などが参考になる.
◆治療方針
胸膜炎の治療は原疾患の治療と対症療法に分かれる.大量胸水による呼吸障害がある場合は,対症療法として胸腔ドレナージが必要である.胸腔ドレナージを行う場合は,皮膚・軟部組織感染のある部位は避けるとともに,急激かつ大量の排液は再膨張性肺水腫の原因となるので注意する.
A細菌性胸膜炎
肺炎に随伴する胸膜炎では大量胸水をきたすことは少なく,適切な治療を行えば予後は良好である.可能な限り原因微生物の同定を行うことが望ましく,それに応じた抗菌薬を使用しながら胸水量をフォローするのがよい.肺炎に随伴する胸膜炎の場合は治療期間は1~2週間程度になることが多いが,臨床経過
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