頻度 割合みる
治療のポイント
・治療の基本は抗菌薬投与と胸腔ドレナージである.
・市中発症では肺炎球菌や口腔内レンサ球菌が原因菌として多いが,嫌気性菌の関与も念頭において抗菌薬を選択する.
・フィブリン隔壁で膿胸腔が多房化している場合,線維素溶解酵素薬を注入して効率的にドレナージできるようにする.
・有瘻性膿胸では,気管支鏡を用いた気管支閉鎖術や外科的治療が必要な場合がある.
◆病態と診断
A病態
・膿胸は胸腔内に膿が貯留した病態である.
・多くは肺炎から胸膜に炎症が波及し発症する.
・原因菌は市中発症では肺炎球菌やStreptococcus anginosusグループを含む口腔内レンサ球菌が多く,嫌気性菌も関与しやすい.
・一方,院内発症ではグラム陰性桿菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA:methicillin-resistant Staphylococcus aureus)が関与する頻度が高くなる.
・膿胸腔と気管支が交通し有瘻性膿胸となった場合,難治性となりやすい.
・慢性膿胸は発症から3か月以上経過したものを指す.
B診断
・肺炎の症状に加えて胸痛を伴いやすい.
・胸部X線やCTで胸水の有無およびその位置や量を確認する.
・胸腔穿刺で胸水が膿性であることを確認し,グラム染色と微生物の培養検査を行う.
・胸水はpH<7.2,糖の低下などの所見を認める.
・胸部画像で鏡面像があれば,気管支が膿胸腔と交通し有瘻性膿胸となっていることが示唆される.
◆治療方針
A抗菌薬
胸腔穿刺で胸水を採取して微生物検査に提出し,抗菌薬投与を行う.微生物の同定および感受性が判明するまではグラム染色所見も参考にしてエンピリックに抗菌薬投与を行う.膿に悪臭があれば嫌気性菌の関与が示唆される.
市中発症で耐性菌のリスクがない場合のエンピリック治療は市中肺炎に準じて抗菌薬を選択するが,嫌気性菌のカバーも行うようにする.一方,院内
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