今日の診療
治療指針

抗凝固・抗血小板療法
anticoagulant and antiplatelet therapy
奥村 謙
(済生会熊本病院・循環器内科不整脈先端治療部門最高技術顧問)

GL2020年JCSガイドラインフォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法

ニュートピックス

・抗凝固療法:80歳以上で出血リスクが高い日本人心房細動患者(高度腎機能障害,出血既往など)に対する低用量エドキサバン(15mg)の脳梗塞予防効果が確認され,保険承認された(2021年8月).

・抗血小板療法:脳梗塞再発リスクを有する日本人脳梗塞患者(心原性脳塞栓症を除く)に対するプラスグレルの有効性・安全性がクロピドグレルと同程度であることが示され,保険承認された(2021年12月).

治療のポイント

・原則として添付文書に記載された用法・用量および用量調節基準に従い使用する.

・出血リスクを伴うため,投薬開始前および投薬中は出血リスク(腎機能・肝機能障害,貧血,血小板減少,低体重,出血既往,併発症,転倒リスク,ポリファーマシーなど)を評価し,適応と薬剤選択,用量設定の参考とする.

・大出血発生時は投薬を一時的に中止し,出血の治療が完了し次第,すみやかに再開する(薬剤の種類,用量を再考する).

・出血リスクが低い処置は投薬継続のまま実施する.出血リスクが高い場合は,患者背景(特に腎機能)と薬剤によって休薬期間が異なるため,添付文書を参照する.DOACは継続または術当日の朝のみ休薬し,止血確認後に再開することが多い.

A作用機序と適応

1.抗凝固薬

a.作用機序

 凝固因子を直接または間接的に阻害し,フィブリン血栓形成を抑制する.主に下肢静脈や心房細動(左心房),心筋梗塞や左心室瘤内での血栓形成を抑え,血栓塞栓症を予防する.

 主な抗凝固薬は,注射薬として未分画ヘパリン〔アンチトロンビンと結合し,第Ⅹa因子,トロンビン(第Ⅱ因子)を阻害〕,エノキサパリン(低分子ヘパリンで主に第Ⅹa因子を阻害),フォンダパリヌクス(第Ⅹa因子阻害薬)がある.経口薬としてワルファリン(ビタミンK拮抗薬でビタミン

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