治療のポイント
・ステント植込み後の患者には抗血小板薬2剤併用(DAPT)が一定期間行われる.
・ステント植込み後の慢性期には抗血小板薬1剤のみとする.
・抗凝固療法が行われている患者では,ステント植込み後の慢性期には抗凝固療法のみとする.
カテーテルを用いて冠動脈を治療するPCIのほとんどの症例にステントが用いられ,さらにそのなかでも薬剤溶出性ステント(DES:drug eluting stent)が多くを占めるようになった.血管内に異物を残すという行為であるステント植込みは,一定期間にわたって血栓症のリスクを増大させることになるが,血管内のステント全体を新生内膜が被覆する頃になるとステント血栓症のリスクは低減されると考えられている.ステント内への新生内膜増殖によって生じる再狭窄を予防する目的で開発されたDESは,内膜の形成とステントの被覆を障害するため,長期にわたる血栓症のリスクが問題となった.第1世代DESでは,ステント植込み後の慢性期に遅発性ステント血栓症が生じたことから長期の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT:dual antiplatelet therapy)が必要と考えられたが,第2世代以降のDESではより短期のDAPT期間で塞栓症イベントは変わらず,出血性イベントを減少させられることが示されるようになってきた.「2020年版JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法」では,患者の出血リスクを検討し,出血高リスク(HBR:high bleeding risk)患者であるとされた場合には1~3か月のDAPT期間でよいとされるようになった(→,「循環器疾患 最近の動向」参照).しかし,出血リスクが低く,塞栓症リスクが高い患者は非常に少ないので,基本的にはほぼすべての患者でDAPT期間は1~3か月としている.
下記ではPCI直前のローディ
関連リンク
- 今日の治療指針2023年版/循環器疾患 最近の動向
- 治療薬マニュアル2023/アスピリン《バイアスピリン》
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- 治療薬マニュアル2023/クロピドグレル硫酸塩《プラビックス》
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- 治療薬マニュアル2023/エドキサバントシル酸塩水和物《リクシアナ》
- 治療薬マニュアル2023/アピキサバン《エリキュース》
- 今日の治療指針2023年版/抗凝固・抗血小板療法
- 今日の治療指針2023年版/急性心筋梗塞
- 今日の治療指針2023年版/急性心筋梗塞(ST上昇型心筋梗塞)
- 標準的医療説明/非弁膜症性心房細動に対する抗凝固療法(DOAC治療)