今日の診療
治療指針

植込み型除細動器
implantable cardioverter defibrillator(ICD)
副島京子
(杏林大学教授・循環器内科学)

GL不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)

治療のポイント

・突然死の1次予防では,基礎心疾患の有無,左室駆出率(LVEF)が重要な評価項目である.

・薬物や血行再建治療による心機能の回復が予想される場合,一時的にWCDで突然死を予防することがある.

A除細動器の原理と種類

‍ 植込み型除細動器(ICD)は致死的頻脈性不整脈による心臓突然死を予防し,生命予後を改善する,有効かつ確立された治療法である.前胸部に本体を植え,経静脈的にリードを心内に留置し,頻拍レートに応じた治療方法(除細動と抗頻拍ペーシング)を設定する.抗頻拍ペーシングは,約7割の心室頻拍(VT:ventricular tachycardia)で有効とされ,除細動と異なり痛みを伴わない.

 断線などのリード不全に対しては,癒着による静脈閉塞,狭窄などからリード抜去が必要となることがある.一方,経静脈リードではなく皮下リードを用いた皮下型ICD(S-ICD:subcutaneous-ICD)は,胸骨上の皮下のリードと腋窩の本体からなる.リード不全の際も皮下リードの抜去であり,経静脈リード抜去に比較して合併症は少ない.ただし,心内リードがないため抗頻拍ペーシングや徐脈ペーシングができず,適応が限られる.

 急性虚血や心不全の早期に突然死リスクが高い一方で,今後の回復が予想される患者で用いられるのが着用型心臓除細動器(WCD:wearable cardiac defibrillator)である.心電図電極と除細動パッドが入った着用型ベストを用いて,血行動態を破綻させる心室性不整脈に対する治療を行う.

BICDの適応

 詳細は「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」を参照.クラスⅠのみ記載する.

1.基礎心疾患がある患者に対する2次予防

 心室細動(VF:ventricular fibrillation),VT,電気シ

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