今日の診療
治療指針

心臓再同期療法
cardiac resynchronization therapy(CRT)
草野研吾
(国立循環器病研究センター・心臓血管内科部門長(大阪))

ニュートピックス

・日本人を含むアジア人において,欧米人よりもCRTの有効性が高い(レスポンダーが多い)可能性が示唆されている.

治療のポイント

・QRS幅の広い,左室非同期性収縮を伴う薬剤抵抗性の症候性心不全症例に対する植込み型デバイス治療として,CRTは確立された治療法であり,「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」や「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」において,心不全の程度,左脚ブロックの有無,QRS幅,洞調律の有無,ペーシング依存の有無によってCRTの適応が細かく決められている.

・CRTは,QRS幅が150ms以上の左脚ブロック例に特に効果が期待できるが,欧米と異なり,わが国ではQRS幅が120~130msの比較的狭いQRS幅の患者にも適用できる.

・除細動機能付き心臓再同期療法(CRT-D)とペーシングのみのCRT-Pがある.

・心機能低下例は,同時に致死的な心室性不整脈の合併リスクを併せもつためCRT-Dが推奨されるが,症例に応じて除細動機能を付けるかどうかを決定する.

・植込み術後,治療に反応しないノンレスポンダーが30%前後存在する.

・植込み術後,最大限の効果を得るためプログラミングの最適化(optimization)を定期的に行う必要がある.

◆病態と診断

・心不全は左室収縮能の低下が主な原因であるが,電気的には心室内伝導障害,心房心室間同期不全,心室間同期不全が問題となる.左脚ブロック症例では,左室の中隔興奮に比べて自由壁の興奮伝播が遅れるため,それに伴い左室収縮の同期性が欠如し不均一となる.この非同期状態(dyssynchrony)を改善するのがCRTであり,心不全症状の改善,心不全入院の減少,予後改善が期待できる.

・CRTは,左室自由壁の収縮時相が遅延した部位をペーシングにより是正する治療であるが,左室自由壁を走行する冠静脈にペーシン

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