今日の診療
治療指針

安定狭心症
stable angina
中村正人
(東邦大学医療センター大橋病院教授・循環器内科)

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GL安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)

GL2020年JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法

GL2022年JCSガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療

治療のポイント

・治療の目的は狭心症症状の寛解によるQOLの改善と長期予後の改善にある.

・血行再建の有無に関係なく,禁煙,肥満の是正など生活スタイルの改善を包含した至適薬物療法(OMT)を厳格に実践する.

・生活環境やライフスタイルにおける個々人の違い,患者の希望を考慮して血行再建の適応を適切に決定する.

・血行再建の際には,高出血リスクであるか否かを評価し,ステント留置後は短期の2剤併用抗血小板療法とその後はP2Y12阻害薬単剤を考慮する.

◆病態と診断

A病態

狭心症は,一過性かつ可逆的な心筋虚血により前胸部絞扼感などの胸部症状を呈する症候群である.心筋虚血は心筋レベルでの酸素需要供給のアンバランスによって生じる.

・主な原因は動脈硬化による器質的冠動脈狭窄であるが,貧血,発熱などの心外因子による心筋酸素需要の増加が関与することもある.

・ACSに対し,慢性冠症候群(CCS:chronic coronary syndrome)の用語が導入された.薬剤,生活様式是正などで冠動脈疾患の経過は修飾され動的な性質を有することを表現した概念である.

・冠動脈プラークの破綻や血栓が関与すると不安定狭心症と診断され,治療方針は大きく異なってくる(,「不安定狭心症,非ST上昇型心筋梗塞」の項参照).

B診断

・安静時の心電図は虚血性の異常所見を認めないことが一般的であるため,詳細な病歴聴取から胸痛を典型的狭心痛,非典型的狭心痛,または非心臓疾患由来の胸痛に分類し,性別,年齢,リスク因子を加味して狭心症の確からしさを推定する.

・胸痛病歴聴取のポイントは,発作

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