今日の診療
治療指針

冠攣縮性狭心症
vasospastic angina(coronary spastic angina)
安田 聡
(東北大学大学院教授・循環器内科学)

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GL冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)

治療のポイント

・胸痛の性状などの詳細な病歴聴取が重要である.

・急性心筋梗塞や突然死の原因となりうるため,内服アドヒアランスの徹底を指導する.

・禁煙を含めた生活指導が発作の予防に重要である.

◆病態と診断

A病態

・冠攣縮性狭心症とは,冠動脈の過収縮(スパスム)によって一過性に生じる冠血流の低下を原因とする心筋虚血とそれに伴う胸部症状が生じる症候群である.

・冠攣縮の要因としてRhoキナーゼ系の亢進に伴う血管平滑筋の過収縮が報告されている.

・冠攣縮は急性心筋梗塞,徐脈または心室性不整脈を生じることで心臓突然死の原因になりうる疾患である.

B診断

・詳細な病歴聴取が重要であり,喫煙歴,胸痛の症状,労作との関連,持続時間,好発時間帯,ニトログリセリンの効果などに注目する.

・診断は日本循環器学会「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)」の診断基準に則り,以下のように行う.

1)自然発作時に一過性の虚血性心電図変化を認めた場合は確定診断となる.

2)上記を認めず,ニトログリセリンが著効する胸部症状で,以下の4項目のいずれかを満たす場合には冠攣縮性狭心症疑いとなる.①夜間から早朝の安静時症状,②運動耐容能の著明な日内変動,③過換気での誘発,④Ca拮抗薬による発作抑制.

3)疑診例には,循環器専門施設での冠攣縮誘発薬物負荷試験を考慮する.

◆治療方針

 冠攣縮性狭心症の治療は日常生活の管理と,発作時の急性期治療と長期的な発作予防治療に大別される薬物療法で行う.

A日常生活の管理

 喫煙は重要なリスクであり,禁煙指導は徹底されるべきである.また,一般的な冠危険因子に加えて過労や精神的ストレス,寒冷が誘因となるため生活習慣の是正を指導する.

B発作時の対応

Px処方例 下記のいずれかを常時携帯する.

1)ニトログ

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