今日の診療
治療指針

急性心筋梗塞(ST上昇型心筋梗塞)
acute myocardial infarction(AMI)
石原正治
(兵庫医科大学主任教授・循環器・腎透析内科学)

頻度 よくみる

GL急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)

GL2020年 JCSガイドラインフォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法

治療のポイント

・来院から10分以内に病歴,バイタルサインをチェックし心電図を記録する.発症12時間以内のST上昇型心筋梗塞と診断されたら,心筋トロポニンの結果を待つことなく迅速(到着から90分以内)にprimary PCIを行う.

・primary PCIができない施設では,施行可能な施設へすみやか(施設滞在時間30分以内)に救急車で転院搬送する.

◆病態と診断

・急性心筋梗塞は急性期の診断・治療の進め方の違いからST上昇型心筋梗塞と非ST上昇型心筋梗塞に分けられる.本項ではST上昇型心筋梗塞について解説する(後者については,「不安定狭心症,非ST上昇型心筋梗塞」の項参照).

A病態

・主として冠動脈がプラーク破綻により形成された血栓により閉塞され,貫壁性に心筋虚血を生じ,壊死に至る病態である.

・プラーク破綻以外にも冠攣縮や冠動脈塞栓,大動脈解離,特発性冠動脈解離などが冠動脈閉塞の原因となりうる.

・心筋壊死は冠動脈閉塞から20分ほどで初めは心内膜側に生じ,2~3時間で急速に心外膜側に拡大する.それ以降,壊死の拡大は緩徐に進行し12~48時間で完成する.

・梗塞巣では発症1~2日と5~7日をピークに炎症細胞が浸潤し組織修復が進むが,それぞれのタイミングで心破裂の危険性が高くなる.

・発症早期は致死性不整脈を生じやすく,心筋梗塞患者の約15%は病院到着前に突然死していると推定される.

B診断

・まず症状から急性心筋梗塞を疑うことが重要である.胸痛は20分以上で,圧迫感,絞扼感などのほか,単に不快感と訴えられることもある.顎,肩,心窩部への放散痛や,特に胸部症状を伴わずこれらの部位だけに症状が限局することもある.高齢者では息切れや倦怠感,意識レ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?