今日の診療
治療指針

虚血性心疾患(外科)
ischemic heart disease(surgery)
夜久 均
(京都府立医科大学大学院教授・心臓血管外科学)

GL安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)

◆病態と診断

A病態

・虚血性心疾患は冠動脈の狭窄や閉塞によって起こる疾患で,その部位,範囲によって多彩な病態を示す.

・心筋のバイアビリティが障害されていない場合は典型的な労作性狭心症をきたすことが多いが,心筋梗塞を発症した場合,障害した心筋の部位,範囲によりさまざまな病態を示す.

・心原性ショック,致死性不整脈は急性心筋梗塞の重篤な合併症であるが,緊急手術を要する機械的合併症として心破裂,心室中隔穿孔,乳頭筋断裂による急性僧帽弁逆流があり,また陳旧性心筋梗塞においては機能性僧帽弁逆流,心室瘤をきたして手術が必要になる場合もある.

B診断

・詳細は内科の各項に譲るが,陳旧性心筋梗塞による虚血性心筋症に対する左心室形成の適応がある場合は,左室容積や心機能の評価に心臓MRIが有用である.

・またガドリニウム遅延造影像では心筋バイアビリティの空間解像能が優れており,左室形成における縫合線決定に有用である.

・冠動脈バイパス施行の際は冠動脈CTにより,具体的なバイパスのデザインをイメージできたり,冠動脈の筋肉内走行を検出できたりし,有用性が高い.

◆治療方針

A虚血性心疾患に対する外科治療

1.冠動脈バイパス術(CABG:coronary artery bypass grafting)

 狭窄,あるいは閉塞した冠動脈の末梢に新たな血管を吻合して血流のバイパス路を作成し,冠動脈末梢側の血流を改善させる手術である.バイパスに使用する血管には内胸動脈,大伏在静脈,橈骨動脈,右胃大網動脈などがある.このうち内胸動脈が長期開存性などの面で最も優れているため,多くの場合に,灌流域が広く,左心室壁の主要部分を灌流する左前下行枝に使用される.また,内胸動脈は動脈硬化の影響が及んでいることが少なく,中枢側を離断せずに使用できるメリットもある.両側の内胸動脈を使用

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