今日の診療
治療指針

上室頻拍
supraventricular tachycardia
里見和浩
(東京医科大学准教授・循環器内科学)

頻度 よくみる

GL不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)

治療のポイント

・心電図上QRS波形が正常と同じでRR間隔が一定の頻拍(narrow QRS頻拍)である.

・頻拍の停止には迷走神経刺激,アデノシン三リン酸(ATP)やベラパミル静注が用いられる.

・頻拍の予防として抗不整脈薬,カテーテルアブレーションがある.

◆病態と診断

A病態

・ヒス束より心房側に頻拍起源や回路がある頻拍を上室頻拍とよぶ.房室結節と副伝導路を介した房室間のリエントリー性頻拍(AVRT:atrial ventricular reentrant tachycardia),房室結節二重伝導路によるリエントリー(AVNRT:atrial ventricular nodal reentrant tachycardia),さらに心房に頻拍起源があり,房室結節を介して心室に伝導する心房頻拍(AT:atrial tachycardia)がある.

B診断

・頻拍中の心電図でnarrow QRS頻拍が記録されれば上室頻拍と診断できる.P波が明らかでない場合はAVRTもしくは通常型AVNRTである.P波がQRS前にある場合(long RP頻拍)は非通常型AVNRTやATの可能性がある.

・治療的診断としてATPが有用である.ATPは一過性に房室伝導を抑制する.頻拍が停止した場合にはAVRTないしAVNRTの可能性が,RR間隔が延長するだけで頻拍が持続する場合にはATの可能性が高い.

・頻拍中の心電図が記録できない場合,症状から推定せざるをえない.突発的に動悸発作が起こり,その停止も明瞭である場合,上室頻拍と推測される.

◆治療方針

 頻拍が持続している場合は頻拍の停止を試みる.停止したあとは発作の予防を行う.

A発作時の対応

 迷走神経刺激手技:Valsalva法により(息こらえを10~30秒),停止を試みる.眼球圧迫は原則禁忌である.

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