今日の診療
治療指針

J波症候群(ブルガダ症候群,早期再分極症候群)
J wave syndrome〔Brugada syndrome,early repolarization syndrome(ERS)〕
相庭武司
(国立循環器病研究センター・臨床検査部部長(大阪))

頻度 よくみる

GL遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017年改訂版)

GL不整脈薬物治療ガイドライン(2020年改訂版)

治療のポイント

・無症状であれば基本的に経過観察のみでよい.心室細動や心停止蘇生後患者についてはICDが絶対適応である.

・失神の既往例については,不整脈による失神を疑う場合や,けいれん,夜間苦悶様呼吸を伴う場合にはICDが推奨される.

・薬物治療はICDに比較して不確実であり,高レベルのエビデンスもいまだない.

◆病態と診断

Aブルガダ症候群

1.病態

・症状は心室細動・心停止,失神,めまい,苦悶様呼吸や動悸,胸部不快感などだが,多くは無症状で学校・職場検診でみつかる場合が多い.

・日本人を含むアジア人の成人男性に多い(1~3/1,000人).女性はきわめてまれである.

・発作は夜間・安静時に生じることが多く,「ポックリ病」の原因の1つともいわれている.

・心室細動既往例の致死性不整脈再発率は10%/年,一方で無症状例の新規心室細動発生は0.1%/年と推定される.

2.診断

・症状の有無によらず右側胸部誘導にてcoved型(0.2mV以上のST上昇)心電図図a)があればブルガダ症候群と診断される.

・通常(第4)肋間ではsaddle back型でも,高位肋間(第2,3肋間)ではcoved型を呈することはしばしばあるため,ブルガダ症候群を疑う場合には必ず高位肋間のⅤ1~Ⅴ3 誘導も併せて記録する.

・また発熱時や薬物(Naチャネル遮断薬)負荷検査によりcoved型を呈する場合も診断可能である.

・saddle back型(図b)心電図のみではブルガダ症候群とは診断しない.ただし,saddle back型でも時にcoved型に変化する場合もあることから,一度の心電図だけでブルガダ症候群を完全には否定できない.

・電気生理検査や遺伝子検査などはリスク評価には有用であるが,ブルガダ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?