今日の診療
治療指針

QT延長症候群
long QT syndrome
清水 渉
(日本医科大学教授・循環器内科学)

頻度 割合みる

治療のポイント

・遺伝子診断率は75%程度と高く,遺伝子型別の生活指導や治療が実践されている.

・LQT1では「競技レベル」の運動,競泳,潜水は禁止とし,β遮断薬が最も有効である.

・LQT2でも運動制限とβ遮断薬が有効であり,K製剤とK保持性利尿薬の併用による血清K値の上昇も有効である.

・LQT3ではメキシレチンが有効であり,女性ではβ遮断薬が有効である.

・心室細動または心停止既往例では,ICDのクラスⅠ(絶対)適応である.

◆病態と診断

A病態

QT時間の延長とtorsade de pointes(TdP)とよばれる多形性心室頻拍(VT:ventricular tachycardia)を主徴とし,時に心室細動(VF:ventricular fibrillation)に移行し心臓突然死の原因となる.

・QT延長は,修正QT時間(QTc=QT/$\sqrt{RR}$)が440ms以上と定義される.

・頻度はおよそ2,000人に1人(0.05%)で,やや女性に多い.

・症状は失神,心停止,突然死であり,初発症状として致死性イベントを5%未満に認める.

B診断

1.臨床診断

・Schwartzのリスクスコアを用いて行い,心電図所見,臨床症状,家族歴を点数化し,合計3.5点以上の場合に臨床診断される.

・先天性QT延長症候群(LQTS:long QT syndrome)関連遺伝子に明らかな病的変異を認める場合,常にQTc≧500msの場合にも臨床診断される.

2.遺伝子診断

・K,Na,Caイオンチャネルなどに関連する遺伝子上に75%の患者で変異を認める.

遺伝子変異が同定される90%以上の患者はLQT1,LQT2,LQT3(それぞれ40%,40%,10%)である.

・LQT1では幅広いT波,LQT2では平低ノッチ型T波,LQT3では遅発性T波が特徴的である.

・いずれの遺伝子型でも,QTcの延長

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