今日の診療
治療指針

慢性心不全
chronic heart failure
山本一博
(鳥取大学教授・循環器・内分泌代謝内科学)

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GL急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

GL2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療

ニュートピックス

・EMPEROR-Preserved試験においてHFpEFにSGLT2阻害薬を投与すると,1次エンドポイント(心血管死ないし心不全入院)は21%低下することが示された(p<0.001).

・HFrEFの標準的薬物治療にサクビトリルバルサルタン,SGLT2阻害薬が追加された.

治療のポイント

・心不全と診断したら,できるだけ早期に標準的薬物療法を開始する.

・HFrEFに対する標準的治療薬は,できるだけ目標投与量まで増量する.

・基礎心疾患に応じた治療が必須であり,2次性心筋症の診断は重要である.

・患者教育を通じて自己管理能力を高めることが,治療効果の向上に有用である.

◆病態と診断

A病態

・慢性心不全とは,心臓の構造的ないし機能的異常のために組織が要求するだけの酸素を正常な充満圧のもとでは心臓から供給することが困難な状況が一定期間以上続いている状態,と定義される.

・慢性心不全とは病名ではなく,心筋症,弁膜症などの基礎心疾患の病態進行に伴い血行動態の異常をきたし,自覚症状,他覚所見を認める状態を指している.

・左室駆出率によって薬物療法への反応が異なるので,HFrEF(heart failure with reduced ejection fraction)とHFpEF(heart failure with preserved ejection fraction)は異なる病態として認識すべきである.

・骨格筋機能,栄養状態,フレイルなど,非心臓要因も重症度を規定している.

B診断

・心機能障害に結びつく既往(高血圧,冠動脈疾患など),心不全を疑わせる自覚症状(労作時息切れなど),心不全を疑わせる身体所見(心雑音聴取,下腿

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