今日の診療
治療指針

大動脈弁膜症
aortic valve disease
成瀬元気
(岐阜大学医学部附属病院・循環器内科・臨床講師)

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GL2020年改訂版弁膜症治療のガイドライン

Ⅰ.大動脈弁狭窄症(AS)

治療のポイント

・外科的大動脈弁置換術(SAVR)か経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)かの選択は,年齢や手術リスク(STS score,EuroSCOREなど)を評価したうえで,ハートチームでの十分な議論が必要である.

・若年者のASに対しては,将来的なTAV in SAVの可能性も考慮に入れた人工弁や術式の選択も必要になってくる.

◆病態と診断

A病態

・本邦におけるAS(aortic stenosis)の原因は加齢に伴う変性が8割以上を占め,その他リウマチ性,先天性(一尖弁,二尖弁,四尖弁)がある.重症AS患者に心不全失神胸痛などの症状が出現した場合,平均余命が2~3年とされる.一方で無症候性重症AS患者の予後も悪く,弁狭窄の程度が特に強い患者,進行速度の速い患者,左室駆出率(EF:ejection fraction)が低下している患者でイベント発生率が高い.

・身体所見では頸部に放散する収縮期心雑音,Ⅱ音の奇異性分裂,遅脈などが有名である.ASが進行し1回拍出量が低下すると,収縮期雑音が小さくなることがあり注意が必要である.

B診断

・ASの診断と重症度評価は主に心エコー図検査で行う.重症ASの判定には大動脈弁口面積(AVA)(<1.0cm2)と平均圧較差(mPG)(≧40mmHg),大動脈弁最大血流速度(≧4.0m/秒)が用いられるが,1回拍出量の低下に伴い圧較差が増大しない低流量低圧較差AS(low flow,low gradient AS)もあり,ドブタミン負荷心エコー図検査を行う.また,無症候性重症ASや症候性中等度ASに対し,負荷時の症状や血行動態の把握のために運動負荷心エコー図検査を検討する.

・造影CTは正確な弁形態の把握だけでなく,TAVI(transcatheter aort

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