GL2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン
治療のポイント
・心機能や全身臓器の不可逆的変化が起きる前の適切なタイミングで外科的治療を行うことで生命予後を延長できる.
◆治療方針
本項における推奨レベルは日本循環器学会による「2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン」に準拠し,病因に関しては他項を参照していただきたい.
A弁膜症の外科的治療
1.大動脈弁狭窄症(AS)
有症状の重症AS(aortic stenosis)はクラスⅠの手術適応である.無症状でも心機能低下例はクラスⅠ,最大流速が5m/秒以上の超重症ASはクラスⅡaの手術適応である.大動脈弁置換術(AVR:aortic valve replacement)が標準的外科治療だが,ハイリスク症例には経カテーテル的AVR(TAVR:transcatheter AVR)の適応となる.近年は大動脈二尖弁や慢性透析患者にも適応拡大され,最終的にはハートチームでの議論を経て決定する.
2.大動脈弁閉鎖不全症(AR)
重症AR(aortic regurgitation)は有症状や心機能低下例はクラスⅠ,無症状でも心拡大進行例はクラスⅡの手術適応である.通常はAVRが行われるが,近年若年者には大動脈弁形成術も選択肢となり,弁温存基部置換術が良好な成績を収めている.ARに対するTAVRは現時点で本邦では認められていない.
3.僧帽弁狭窄症(MS)
弁口面積1.5cm2 以下の中等症以上の有症候性MS(mitral stenosis)はクラスⅠの手術適応であり,無症状でも運動負荷試験で症状が出たり心房細動を発症するとクラスⅡの適応となる.弁形態が適していれば経皮的僧帽弁交連切開術が低侵襲だが,弁置換術や交連切開術との選択はハートチームで決定する.
4.僧帽弁閉鎖不全症(MR)
重症一次性(器質性)MR(mitral regurgitation)は