今日の診療
治療指針

肥大型心筋症
hypertrophic cardiomyopathy(HCM)
前川裕一郎
(浜松医科大学主任教授・内科学第三)

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GL心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)

ニュートピックス

・欧米で施行された,症候性閉塞性肥大型心筋症を対象とした第Ⅱ相試験において直接的サルコメア阻害薬であるmavacamtenの有効性が証明された.

治療のポイント

・肥大型心筋症の病型(非閉塞性あるいは閉塞性)を考慮して適切な薬剤を選択する.

・肥大型心筋症の合併症である心不全,不整脈に対する治療につき理解しておくことが重要である.

・閉塞性肥大型心筋症は,薬物療法抵抗性の症例に対して侵襲的治療が選択される場合がある.

◆病態と診断

A病態

・肥大型心筋症は,左室ないしは右室心筋の肥大と心肥大に基づく左室拡張能低下を特徴とする疾患群と定義される.

・遺伝性疾患であるが,既知の原因遺伝子が同定されない症例が半数以上に及ぶ.

B診断

・症状(合併症による症状を含む),例えば,胸痛,息切れ,呼吸困難,動悸,眼前暗黒感,失神,麻痺(四肢,顔面),構音障害など,および心電図や胸部X線所見として肥大型心筋症に特異的なものはない.

・診断の契機となるのは,心臓超音波所見による左室肥大であることが多い.日本循環器学会/日本心不全学会「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」では,心臓超音波や心臓MRI検査において15mm以上の壁肥厚が認められる場合,または肥大型心筋症の家族歴がある場合は13mm以上でも肥大型心筋症を疑う.

・高血圧症や大動脈弁狭窄症,ファブリー病やアミロイドーシスなどに認められる心肥大については,肥大型心筋症類似の二次性心筋症として区別する.

◆治療方針

 肥大型心筋症は無症候例が大半であるため,一部の症候例が治療対象となる.治療方針を考える際には,①肥大型心筋症の病型が何であるか,特に非閉塞性か閉塞性か,②合併症の有無,について精査のうえで方針を決定する.

 薬物療法が基本である.薬物療法抵抗性の症例に限り,閉塞性肥大型心

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