今日の診療
治療指針

拘束型心筋症
restrictive cardiomyopathy(RCM)
猪又孝元
(新潟大学大学院教授・循環器内科学)

頻度 (有病率は10万対0.2人,罹患率は10万対0.06人/年)

治療のポイント

・特異的な治療はない.心不全への対症的薬物管理が中心となる.

・うっ血を軽減する薬物として利尿薬を用いるが,難治例にはループ利尿薬にトルバプタンを併用する.

・病期が進行すると,根本的には心臓移植しかない.

◆病態と診断

A病態

・左室拡張障害が基本病態であり,通常はアミロイドーシスなどの2次性を除く特発性を指す.

・①硬い心筋の存在,②左室拡大や肥大の欠如,③正常または正常に近い左室収縮機能,④原因(基礎疾患)不明,が診断の必要十分条件である.

・一部にサルコメア蛋白の遺伝子異常が存在する.

・収縮性心膜炎,心アミロイドーシス,心内膜心筋線維症,高齢者心との鑑別が必要である.

・小児の原発性心筋症のなかで生命予後が最も不良で,5年生存率は約30%である.

B診断

・息切れや倦怠感,動悸や失神のほか,健診での心電図異常で発見されることがある.

・主に画像診断と心臓カテーテル検査により診断する.

・心エコー図で,左室拡大および壁肥厚がなく,左室壁運動が正常にもかかわらず,左室流入速波形に拘束障害パターンを示す.

・心臓カテーテル検査にて,左室のa波増高や拡張末期圧上昇,時にdip & plateauパターンがみられる.心筋生検は2次性の除外が主たる目的であるが,ほかの心筋症と比して,心筋細胞の肥大を認めず間質線維化が軽度である.

◆治療方針

 特異的な治療はない.水分管理や運動制限などの自己管理および対症的薬物管理が中心となる.病期が進行すると,根本的には心臓移植しかない.特に,2歳未満での発症例では進行が速く,心臓移植のタイミングを逃さない.

A心不全への治療

 うっ血を軽減する薬物としては,利尿薬が主軸となる.低血圧例が多く,血管拡張薬が果たせる役割には限りがある.トルバプタンは腎機能障害や低Na血症が併発する例においても,血管

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?