今日の診療
治療指針

たこつぼ心筋障害(たこつぼ症候群)
Takotsubo syndrome
明石嘉浩
(聖マリアンナ医科大学主任教授・循環器内科)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・「たこつぼ心筋症」や「たこつぼ心筋障害」として馴染みのある名称であるが,本来の心筋症とは性質がやや異なる疾患群であるため,「たこつぼ症候群」と表現されている.さまざまな疾患に併発することが多く,新型コロナウイルス感染症に伴う直接的な合併症としての報告が散見される.

◆病態と診断

A病態

・冠動脈支配領域を越えて,一過性に“たこつぼ様”左室壁運動異常を呈する疾患群として知られる.約2割は壁運動が典型的ではない.

・正式な発症機序はいまだ解明されていないが,脳内の扁桃体を含む大脳辺縁系の活動自体が発症に関与している「脳心連関」が唱えられている.

B診断

・圧倒的に閉経後の女性に多く,ACSを疑った患者の数%を占める.

・先行する身体的・精神的ストレスを認めることが多い.

・冠動脈支配領域に一致しないST上昇を伴う心電図変化を示し,典型例では急性期にaVRのST低下を認め,V1 のST上昇を認めないことが多い(J Am Coll Cardiol 55:2514-2516,2010).

・ST上昇を認めない場合,InterTAK Diagnostic Scoreの合計が70点を超えるか否かを参照する(Eur Heart J 39:2047-2062,2018).

・院内死亡率,再発率はともに数%である(Eur Heart J 39:2032-2046,2018,Eur Heart J 39:2047-2062,2018).

・提言はあるが,ガイドラインに則した治療法はない(Eur Heart J 39:2032-2046,2018,Eur Heart J 39:2047-2062,2018).

◆治療方針

 たこつぼ症候群の治療目標は,発症の引き金となった誘因への対処,そして合併症を起こさないことである.最も多い合併症は心不全であり,機序を考慮した治療が要求される.薬物や

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