今日の診療
治療指針

大動脈弁輪拡張症(マルファン症候群含む)
annuloaortic ectasia(including Marfan syndrome)
荻野 均
(東京医科大学主任教授・心臓血管外科)

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治療のポイント

・ARから心不全を呈するだけではなく,ADの発症機転にもなりうる.ARが出現した時点では,中等度以上の基部拡大を伴っていることが多く,早期に心エコー検査,CT検査で確定診断する.

・特に,マルファン症候群などの遺伝性CTDはADの発症機転となりやすく,AD発症前後で予後が大きく異なるため早期発見を心がける.同時に,遺伝子検査などにより基礎疾患の診断を確定する.

・結合織疾患(CTD:connective tissue disease)においては薬物治療によるAAE拡大防止効果が期待でき,血圧管理を含め,β遮断薬とARB(ロサルタン)による薬物治療を小児期から開始する.

・Bentall手術がいまだ標準的手技である.その場合,患者背景,希望を考慮し,生体弁もしくは機械弁を選択する.

・若年症例が多いため,人工弁関連合併症を回避し良好なQOL維持のため,Bentall手術でなく,可能な限りVSRRで対応する.

・AD発症前,かつVSRRの成功率を高めるべくARが出現する前の,拡大早期の段階で予防的VSRRを行う.

◆病態と診断

A病態

・大動脈弁輪拡張症(AAE:annuloaortic ectasia)は,狭義の意味で「大動脈弁輪(VAJ:ventricular arterial junction)の拡大を伴った大動脈基部拡大」を指すが,一般的にVAJ拡大を伴わない基部拡大も含んで扱われる.

・また,AAEの典型例は「マルファン症候群に伴う洋なし状の基部拡大」であるが,非結合織疾患症例においても,大動脈二尖弁,高血圧,経年的変性(高齢)などの影響で基部~上行の拡大を伴うことがあり,これらも広義のAAEとして扱われ,同様の治療方針(大動脈基部置換術)の対象となる.

B病型・分類

・VAJ拡大の有無:VAJ拡大を伴うものと,拡大がなくバルサルバ洞±STJ(sino-tubu

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