今日の診療
治療指針

大動脈瘤(胸部・腹部)
aortic aneurysm(thoracic,abdominal)
志水秀行
(慶應義塾大学教授・心臓血管外科)

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GL2020年改訂版大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

◆病態と診断

A病態

・大動脈は大動脈基部から上行し,弓部で頸部分枝(腕頭動脈,左総頸動脈,左鎖骨下動脈)を分枝したのち,背側を下行する.横隔膜を貫通したのち腹部分枝(腹腔動脈,上腸間膜動脈,左右腎動脈)を分枝し,腹部大動脈となる.

・一般的な大動脈径は胸部で30mm以下,腹部で20mm以下であるが,大動脈瘤では大動脈短径が1.5倍以上に拡張,あるいは大動脈壁の一部が突出する.部位により胸部大動脈瘤,胸腹部大動脈瘤,腹部大動脈瘤に分類される.また,形態により紡錘状瘤と嚢状瘤に,瘤壁の構造により真性,仮性,解離性にそれぞれ分類される.真性瘤では大動脈壁の3層構造(内膜,中膜,外膜)が保たれた状態で大動脈壁が拡張する一方,仮性瘤では3層構造が破綻し,周囲組織により被膜された状態となる.解離性瘤は中膜レベルで大動脈壁が内外2層に剥離した状態である.動脈硬化性が多いが,感染性,炎症性,外傷性,先天性などもある.

B症状

・動脈瘤による圧迫症状(食道の圧迫による嚥下困難,反回神経麻痺による嗄声)や腹部の拍動を自覚することもあるが,多くは無症状であり,他疾患に対する画像検査により偶発的に診断されることが多い.動脈瘤の部位周辺の痛みを認めた場合は,切迫破裂の可能性がある.血痰や吐下血などは大動脈瘤が気道や消化管に交通,穿破した可能性があり,早急に専門医へコンサルトすべきである.

C診断

・健診時の胸部X線やエコーで診断されることが多いが,確定診断にはCT(特に造影CT)が最も有用である.

◆治療方針

A内科的治療

 降圧治療は非常に重要であり,一般的には収縮期血圧120mmHgを目安とする.経過観察においてはCTが重要であり,初期には1~3か月ごと,形態や瘤径の変化がなく,血圧コントロールが良好であれば6~12か月ごとにCTのフォローアッ

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