今日の診療
治療指針

急性大動脈解離
acute aortic dissection(AAD)
湊谷謙司
(京都大学大学院教授・心臓血管外科学)

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GL2020年改訂版大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

治療のポイント

・Stanford A型であれば救命のための緊急手術が基本方針となる.

・Stanford B型の場合,急性期には降圧療法による治療が奏効することが多いものの,持続する疼痛やmalperfusion(分枝灌流障害)を伴えば侵襲的加療を要し,その場合にはステントグラフト治療(TEVAR)が推奨される.

・治療のためには心臓血管外科を有する施設への救急搬送が必要であり,正しい迅速な診断が必須である.

◆病態と診断

A病態

・大動脈壁が中膜レベルで2層に剥離することで本来の大動脈管腔構造が変化して起こる.本来の大動脈内腔を真腔と呼び,大動脈壁が剥離して新たに生じた腔を偽腔と称する.血液が真腔のみならず偽腔にも流入することで,大動脈破裂や分枝灌流障害が発生する.解離が大動脈基部に進展した場合には,大動脈弁閉鎖不全症や冠血流障害を引き起こす.

・この血液が流入する交通孔(tear:内膜裂孔)をentryと称する.

・偽腔に血流が認められないものを偽腔血栓閉塞型大動脈解離と称するが,画像診断上entryを認めないものを欧米ではIMH(intramural hematoma)と称する.IMHは壁内血腫あるいは壁内出血ととらえ,解離の亜型として認識されてきた.この2つの病態についての理解や定義には混乱がある.

・大動脈破裂により,心タンポナーデを発症することが,急性大動脈解離の死因として最も高率であることが知られる.

・分枝灌流障害による循環障害のために広範囲に臓器障害(脳虚血,狭心症,心筋梗塞,上下肢虚血,脊髄虚血,腸管虚血,肝虚血,腎不全など)をきたす可能性があり,結果としてきわめて多彩な症状を呈することが大きな特徴である.

・解離の進展はDeBakey分類(Ⅰ~Ⅲ)あるいはStanford分類により定義される.Stanf

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