今日の診療
治療指針

消化管疾患 最近の動向
藤城光弘
(東京大学大学院教授・消化器内科学)

◆病態と診断

A学会での主なトピックス

 ウィズコロナからポストコロナへ徐々に移行しつつある状況のなか,遠方で病院を離れられない先生方や子育て世代の先生方の利便性などに鑑み,関連学会は現地とオンラインのハイブリッド開催が基本となっている.消化管領域においては,生活習慣や社会構造の変化などに伴う機能性消化管疾患や炎症性腸疾患の増加に加え,超高齢社会を迎え,ポリファーマシーによる消化管疾患や大腸癌などの腫瘍性疾患の増加も引き続きみられている.それに伴い,学会の中心的なテーマとして,これらの病態解明および診断・治療法の進歩が取り上げられることが多い.具体的には,iPS細胞やオルガノイドなどを用いた病態解明,腸内環境変化や遺伝子,遺伝子発現異常と各種疾患との関連,早期診断や治療効果予測などを可能とするバイオマーカー開発を目指したオミックス解析,低侵襲および臓器温存を目指した新たな内視鏡治療やロボット支援手術法の開発,難治癌に対する集学的治療,診療への人工知能(AI:artificial intelligence),Internet of Things(IoT)や次世代通信技術の応用,などである.切除不能消化管癌の1次治療として免疫チェックポイント阻害薬が使用されるようになり,癌薬物療法は大きな転換期にある.臨床検体を用いたシングルセル解析などによる,腫瘍細胞と間質細胞(免疫細胞,線維芽細胞など)とのクロストークを解明しようとする基礎的研究も積極的に行われるようになってきている.

B診断手法の進歩

1.画像強調内視鏡観察

 通常白色光とは異なり,415nm付近の短波長狭帯域光を主体とした照明光〔narrow band imaging(NBI),blue light imaging(BLI),i-scan optical enhancement(OE),など〕を用いることで,食道癌の存在診断能,

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