今日の診療
治療指針

消化管癌の化学療法
chemotherapy for gastrointestinal tract cancer
山口研成
(がん研有明病院・消化器化学療法科部長(東京))

 本項で取り扱う消化管癌は,主に食道癌,胃癌,大腸癌である.

 化学療法は,目的別に周術期化学療法と緩和的化学療法に大別される.周術期化学療法は,治癒切除の可能性を高めたり,微小転移を制御することで治癒の可能性を上げるために行う.したがって,dose intensity(簡単にいうと単位時間あたりの投与量)にも配慮して行う.一方,緩和的化学療法においては,癌の増悪を制御することで,症状緩和や延命を目的として継続性を大事にして治療を行う.

 なお,癌が抗癌剤に曝露されると耐性を獲得し始める.したがって,抗癌剤投与を開始する際には,各ラインにおける薬剤の選択とラインをつなぐことを視野に入れて投与計画を組み立てていく.

 また,取り扱う全癌種で免疫チェックポイント阻害薬が重要な役割を担うようになり,治療アルゴリズムに記載されるようになった.

Ⅰ.食道癌

GL食道癌診療ガイドライン2022年版 第5版

◆病態と診断

・食道癌の人口あたりの罹患率は,2018年の統計では20.5例(男性34.7例,女性7.0例)(人口10万対)である.

・5年相対生存率(2009~2011年)は41.5%(男性40.6%,女性45.9%)と,治療成績が厳しい癌である.

・主な発生要因は,飲酒や喫煙である.

・現在,食道癌における指針と定められる検診はない状況である.症状がある場合は内視鏡などの検査を行うことが肝要である.

◆治療方針

A周術期化学療法

 主に,ステージⅡ/Ⅲの切除可能症例においては,術前のフルオロウラシル(5-FU)+シスプラチン(CF)療法を2サイクル投与することが標準であった.最近報告されたJCOG(Japan Clinical Oncology Group,日本臨床腫瘍研究グループ)1109試験では,標準治療の3週ごとの術前CF療法2サイクル投与に対して,3週ごとのドセタキセル+5-FU+シスプラチン(D

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