治療のポイント
・浣腸は,便秘,腸疾患時の排便に対し,直腸内に薬剤を注入し,腸管壁の水分を吸収することに伴う刺激作用により腸管の蠕動を亢進させ,また浸透作用により糞便を軟化,膨張化させることにより排便を促す治療法である.
・洗腸とは,高圧浣腸による逆行性洗腸法,あるいは経口薬を用いた洗腸法により腸管内の糞便を洗浄,除去する治療法であり,最近,各種の腸管洗浄剤が登場している.
A浣腸法
浣腸に用いる薬剤としては,グリセリン浣腸液(GE:glycerin enema)やクエン酸ナトリウムが使用されるが,医療機関では一般的にGEが用いられる.
GEを約40℃(体温程度)に温める.薬剤注入にあたり,カテーテル先端の挿入部を少量の内容液で潤すか,オリーブ油,ワセリンなどの潤滑剤を塗布して肛門内に挿入しやすくする.患者を左側臥位(立位は避ける)にして,成人では5~6cm(小児:3~6cm,乳児:3~4cm)のカテーテル目盛位置までストッパーをスライドさせ,ストッパーの位置まで肛門内に緩徐に挿入し,薬剤をゆっくりと直腸内に注入する.無理に挿入すると,直腸粘膜を損傷することがあるので注意が必要である.薬剤投与後,肛門部を脱脂綿などで圧迫し,3~10分後に便意が強まってから排便させる.
Px処方例
グリセリン薬浣腸液 1回10~150mL 直腸内に注入 年齢,症状により適宜増減
!不適切処方 腸管内出血,腹腔内炎症,腸管穿孔(疑い),高度の全身衰弱,下部消化管術直後,吐気,嘔吐または激しい腹痛など,急性腹症が疑われる場合は禁忌である.
!注意 腸管・肛門の炎症・創傷,腸管麻痺,重症の硬結便,重篤な心疾患のある患者,乳児,高齢者,妊婦では慎重に投与する.
B洗腸法
洗腸法は,逆行性洗腸法と経口薬を用いた洗腸法に大別される.
1.逆行性洗腸法
イリゲーターを用い,経肛門的に専用のカテーテル(ECC:enema
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