今日の診療
治療指針

経腸栄養法
enteral nutrition
山下裕玄
(日本大学教授・消化器外科学)

GL静脈経腸栄養ガイドライン-第3版(2013)

治療のポイント

・If the gut works,use it! 栄養療法として,腸管が使用できる場合には可能な限り経腸栄養を行うことが望ましい.

・消化管を用いた栄養吸収がないと,腸管粘膜の免疫機能低下から易感染状態になることに注意する.

・経腸栄養の投与法としては,経口投与と経管栄養があり,経管ルートは経鼻チューブ,胃瘻・空腸瘻が代表的なものである.

・栄養不良評価のスクリーニングが重要であるが,絶対的な指標はなく,複数の指標を多角的に組み合わせて評価するのがよい.

◆病態と診断

A病態

・栄養不良は,身体にとっての必要量に対して栄養素の摂取量が質的・量的に不足して症状を呈した状態である.

・栄養不良状態で栄養素摂取不足が続くと,体に蓄えられた脂肪が主要なエネルギー源として使用されていく.

・脂肪組織量の貯蓄がなくなってくると筋蛋白の異化が亢進し,筋肉の異化亢進,筋肉量低下=サルコペニア(サルコ=筋,ペニア=減少)が進み身体機能が低下する.

・サルコペニアになると,さらなる身体活動低下から筋力低下が進行し,必要なエネルギー量も減少し栄養を取る必要性が低下,結果的に栄養不足,身体活動低下がさらに進行する悪循環(フレイルサイクル)につながる.

・フレイルサイクルが進まないように,いかに早い段階で栄養治療介入により食い止めるかがきわめて重要である.

・筋肉量も体脂肪量も少ない患者の場合は体内栄養貯蔵量が少ないと評価されるため,栄養治療介入の対象として特に注意しておく必要がある.

・高齢者は加齢に伴い活動量が低下していることが多く,併存疾患を有している頻度も高く,低栄養に陥りやすい集団と考えておく.

・腸管を用いた栄養吸収が一定期間欠けてしまうと小腸粘膜の絨毛は萎縮していく.

・体内栄養貯蔵量が少ない患者に消化管からの栄養吸収がない状態を一定期間作ると,腸管

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?