治療のポイント
・肝臓の予備能や他臓器機能などを考慮して,内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)と内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)もしくはその組み合わせを適切に選択する.
・予後が期待できる場合には,血管外へのEISからアルゴンプラズマ焼灼術(APC)を含めた地固め療法を検討する.
・EISには,モノエタノールアミンオレイン酸塩(EO;オルダミン)・ポリドカノール(AS;エトキシスクレロール)・無水エタノール・シアノアクリレート(HS;ヒストアクリル)などの薬剤が用いられ,緊急治療や待機治療,もしくは静脈瘤の部位・形態などに応じて使い分ける必要がある.
◆病態と診断
A病態
・食道静脈瘤は,肝硬変などの門脈圧亢進症を背景に食道の静脈拡張をきたした病態である.
・同様の機序により胃にも静脈瘤が生じることもあり,時に両者が連続する.
・破裂した場合には大量出血により吐血・下血をきたし,致死的な経過をたどることもある.
B診断
・静脈瘤の存在診断は,上部消化管内視鏡もしくはCTにより得られる.
・破裂のリスク評価には内視鏡による診断が不可欠であり,占拠部位(Location;Ls:上部食道にまで認められる,Lm:中部食道にまで及ぶ,Li:下部食道にのみ限局)・形態(Form;F0:治療後に静脈瘤が認められないもの,F1:直線的な比較的細い静脈瘤,F2:連珠状の中等度の静脈瘤,F3:結節状または腫瘤状の静脈瘤)・色調(Color;Cw:白色静脈瘤,Cb:青色静脈瘤)・発赤所見(Red Color sign;RC0:発赤所見を全く認めない,RC1:限局性に少数認めるもの,RC2:RC1とRC3の間,RC3:全周性に多数認めるもの)の組み合わせで記載される.
・治療方針の検討にかかわる情報として,CTによる供血路を含めた血流評価や肝細胞癌合併の有無は重要である.
◆治療方針
食道静脈瘤に対する内視鏡治療の方針は,出血例