今日の診療
治療指針

内視鏡的消化管出血止血法
endoscopic hemostasis for gastrointestinal bleeding
大久保政雄
(山王病院・内科(消化器)部長(東京))

◆病態と診断

・出血源は食道から肛門まで存在し,原因も多様である.初期治療では,まず問診,バイタルサインチェック,理学所見から上部か下部からなのかある程度の出血源を同定する.

A病態

・上部消化管出血:H. pylori感染者の減少に伴い,胃・十二指腸潰瘍出血は減少している.C型肝炎ウイルスの駆除が可能となり,食道静脈瘤破裂も減少している.そのほか逆流性食道炎,急性胃粘膜病変(AGML:acute gastric mucosal lesion),胃癌,膵臓癌十二指腸浸潤,胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE:gastric antral vascular ectasia)などからの出血がありうる.

・下部消化管出血:大腸癌,炎症性腸疾患,大腸憩室出血,虚血性腸炎,痔核出血,直腸粘膜逸脱症候群などがある.

・NSAIDs,アスピリン内服者では,消化管粘膜障害による小腸出血がみられることがある.

B診断

・消化性潰瘍,肝疾患の既往,内服薬,生活習慣(飲酒/喫煙歴)の問診は大切である.

・理学所見としては,脈拍,眼瞼結膜,脱水の程度,腹部腫瘤の有無,表在リンパ節腫大,黄疸,腹水,手掌紅斑,クモ状血管腫の有無などを診察する.また,直腸診は必須であり,便の色を確認することで,消化管出血が上部か下部かの推測ができる.造影CTが望ましいが単純CTでも補助診断としては有用である.

◆治療方針

 「消化性潰瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版)」のフローチャートをに示す.

 血行動態が安定していれば内視鏡的止血が優先される.収縮期血圧<100mmHg,または頻脈>100/分では細胞外液の急速輸液を行う.出血量が多い(20~50%)または血中Hb<7.0g/dLの場合は,輸血も考慮する.

 ショック状態でなければ,鎮静剤使用下での内視鏡が望ましい.鎮静剤は,一般にはミダゾラム(0.02~0.05mg/kg)を使用する

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