今日の診療
治療指針

内視鏡切除術
endoscopic resection
田中信治
(広島大学大学院教授・内視鏡医学)

治療のポイント

・内視鏡切除を行うべき消化管腫瘍の条件は,局所の完全切除が可能で,かつリンパ節転移リスクがほぼないことである.

・術前に,腫瘍の形態や大きさ,表面微細構造,超音波内視鏡所見などから内視鏡切除の適応かどうかを判断する.

・内視鏡切除した病変は,きちんと全割し正確に病理評価し,切除断端やリンパ節転移リスクを評価する.

・内視鏡的粘膜切除術(EMR)は比較的簡便かつ安全な手技であるが,一括切除できる腫瘍はスネアサイズの限界から限定されている.

・内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は,出血・穿孔などの偶発症リスクが高く技術的難度も高いが,大きさにかかわらず腫瘍の一括切除が可能である.

◆病態と診断

A病態

・良性の上皮性腫瘍(胃腺腫・大腸腺腫・大腸鋸歯状病変)などは,前癌病変として内視鏡切除適応である.

・良性病変でも,出血や腸重積のリスクのあるものは内視鏡切除の適応である.

・粘膜内あるいは粘膜下層浅層に限局した胃癌・大腸癌については,内視鏡切除により根治が期待される.

・カルチノイド(NET:neuroendocrine tumor)は粘膜深層部から発生する悪性上皮性腫瘍で,内視鏡切除の適応である.

B診断

・内視鏡切除の適応となる上皮性腫瘍は基本的に無症状であり,検診などにおけるスクリーニング内視鏡で病変を拾い上げる.

・画像強調観察(NBI:narrow-band imaging,BLI:blue laser imagingなど)と拡大観察を組み合わせ,腫瘍の表面微細構造を内視鏡的に評価することで,病変の範囲,悪性度,深達度を予測することができる.

・必要に応じて超音波内視鏡検査,X線造影検査,CT検査などの画像検査も加え,内視鏡切除の適応について判断する.

◆治療方針

A胃病変

 リンパ節転移リスクがきわめて低く一括切除できる病変が,内視鏡切除の適応である.EMR(endoscopic muc

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