今日の診療
治療指針

食道アカラシア
esophageal achalasia
後藤 修
(日本医科大学付属病院准教授・内視鏡センター)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・適切な診断のもと,症状の重症度を考慮して治療介入の是非を検討する.

・治療効果は症例ごとに異なることを事前に説明する.

◆病態と診断

A病態

・下部食道括約筋の弛緩不全と食道体部の蠕動障害により,食道から胃への食物・液体の通過障害をきたす1次性食道運動障害の代表的疾患である.発症原因として自己免疫性疾患,感染,遺伝的素因などが考えられているが,病態は依然として不明である.

・年間発生率は10万人に1人程度とされてきたが,疾患概念の普及により軽症例が増加していることから,発症頻度は上昇傾向にあると想定される.

・食道アカラシアは蠕動障害の種類に応じて3つのサブタイプに分けられる.びまん性食道けいれんなど類縁疾患も複数提唱されており,国際的に疾患分類の整理が行われている.

・食道扁平上皮癌のリスク因子の1つとされており,内視鏡サーベイランスが必須である.

B診断

つかえ感口腔内逆流胸痛が主な症状であり,時に咳嗽,体重減少を伴う.

・上部消化管内視鏡検査,食道造影検査に加え,食道内圧検査が診断にきわめて有効である.

◆治療方針

 下部食道括約筋を含む食道平滑筋の弛緩,拡張,切開が治療の基本となる.主に薬物療法,内視鏡的バルーン拡張術,経口内視鏡下筋層切開術(POEM:peroral endoscopic myotomy),外科手術が選択されるが,食道アカラシアに対して保険適用となっている薬剤はない.また,ボツリヌス毒素局所注入療法も治療法の1つとして挙げられるが,これも保険診療外である.

A薬物療法

 硝酸イソソルビド,ニフェジピン,β作動薬,ホスホジエステラーゼ阻害薬,Ca拮抗薬,抗コリン薬,芍薬甘草湯などが用いられる.軽症例には有効なことがあるが,全般的に効果は限定的である.血圧低下や頭痛,浮腫などの副作用に留意する.胸痛には対症療法として鎮痙薬や鎮痛薬が試みられ

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