今日の診療
治療指針

急性胃炎,急性胃潰瘍
acute gastritis and acute gastric ulcer
春日井邦夫
(愛知医科大学教授・消化管内科)

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GL消化性潰瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版)

治療のポイント

・詳細な問診により病因を確認することが重要である.

・急性腹症との鑑別を行うとともに,緊急内視鏡の適応について迅速に判断する.

・病因の除去と安静を治療の基本とし,全身状態に応じて,絶食,輸液・輸血,内視鏡治療,薬物療法を行う.

◆病態と診断

A病態

・急性胃炎・急性胃潰瘍は,外因性あるいは内因性要因により惹起された胃の急性炎症性疾患であり,粘膜欠損が粘膜筋板を越えた場合を胃潰瘍とする.両者を総称して急性胃粘膜病変(AGML:acute gastric mucosal lesion)とよぶことが多い.

・薬剤,ストレス,飲食物,全身疾患,感染,医原性,異物などさまざまな病因に分けられるが,複数の要因が関連している場合もある.

NSAIDsは,胃内腔のH と結合して非イオン化脂溶性物質に変化し細胞内に入り蓄積(イオントラッピング)し,粘膜傷害を引き起こす.また,アラキドン酸カスケードにおいてシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害して,胃粘膜防御作用を有するプロスタグランジン(PG)を減少させる.これらの相互作用により,胃粘膜傷害を惹起する.

B診断

急激に発症し,心窩部痛,上腹部痛,悪心・嘔吐,食欲不振を訴え,心窩部に圧痛や抵抗を認める.吐血・下血を伴うこともある.

・高齢者,特にNSAIDsやLDA(low-dose aspirin)服用者では自覚症状に乏しい場合も多い.

上部消化管内視鏡検査により,胃粘膜の発赤,浮腫,地図状びらん,出血,潰瘍などの病変が認められる.

◆治療方針

 上部消化管内視鏡検査にて胃粘膜の状態や出血の有無について確認し,必要であれば内視鏡的止血治療を行う.

 基本的治療は病因の除去と安静であり,必要に応じて,絶食,輸液・輸血,薬物療法を行う.

 一般的に予後良好であるが,重篤な基礎疾患の合併例

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