治療のポイント
・虚血性腸炎の多くは一過性型で,保存的治療で軽快する.
・壊死型虚血性腸炎はもちろんであるが,NOMI・腸間膜動脈閉塞症の両疾患においても,腸管が壊死している際には緊急手術が必要で,診断が遅れると生命予後が悪くなるため注意が必要である.
Ⅰ.虚血性腸炎
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◆病態と診断
A病態
・主幹動脈の閉塞を伴わない腸管粘膜の血流障害で,一過性型,狭窄型,壊死型に分類される.
・解剖学的に虚血に陥りやすいS状結腸~下行結腸が好発部位である.
・高齢者に多い疾患であるが,経口避妊薬を服用している女性にも発症する.
・非閉塞性腸管虚血症(NOMI:non-occlusive mesenteric ischemia)は,動脈のれん縮により腸管の虚血をきたす疾患と考えられている.虚血性腸炎とは異なる疾患と考えられているが,主幹動脈の閉塞を伴わないことから本項に記載する.
B診断
・突然の腹痛,下痢・血便が典型的な症状であり,高齢者であれば比較的容易に推測できる疾患である.
・採血で,AST(GOT),LDH,CPKなどの逸脱酵素の上昇,アシドーシスを伴う際には,腸管の壊死を伴っている可能性を考慮する.
・腹部造影CTで,病変部の腸管の浮腫を認める.同部の造影効果が減弱している際には,腸管の壊死を疑う.
・下部消化管内視鏡で,前述の好発部位を中心に粘膜浮腫,発赤,縦走傾向の潰瘍を認める.暗赤色~暗黒色調の粘膜を呈する際には,壊死型の可能性を考慮する.
・NOMIは,認知度も高くなく器質的な動脈の閉塞も伴わないため,その診断は難しい.腹部CTで門脈気腫を認めた際に,本疾患を疑うきっかけになることもある.
◆治療方針
虚血性腸炎の多くは一過性型のため,保存的に治療する.症状の程度にもよるが,腸管の安静のため,絶食として補液する.NOMIで腸管の壊死を伴っていない場合には,血管拡張薬を投与する.腸管の壊死を