今日の診療
治療指針

過敏性腸症候群
irritable bowel syndrome(IBS)
石原俊治
(島根大学教授・内科学第二)

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GL機能性消化管疾患診療ガイドライン2020―過敏性腸症候群(IBS)改訂第2版

治療のポイント

・過敏性腸症候群(IBS)は,反復する腹痛や腹部不快感と便通異常を伴う機能性消化管疾患であり,治療前に器質的疾患の除外が必要である.

・糞便の形状や割合によって患者の優勢症状を見極め,症状に見合った治療法を選択する.

・治療は「機能性消化管疾患診療ガイドライン2020―過敏性腸症候群(IBS)改訂第2版」(以下,ガイドライン)に基づき,第1段階の薬物療法から開始し,治療反応性が乏しい場合には,第2段階,第3段階の治療に移行する.

◆病態と診断

A病態

・消化管運動は,中枢(脳)と内臓知覚(腸管)の相互作用である「脳腸相関」によって制御されている.IBSでは,心理的異常(ストレス)や腸管の知覚過敏によって脳腸相関のバランスが崩れ,結果的に腸管運動異常が誘発されることで病態が形成される.

・脳腸相関のバランス異常には,患者の環境因子や遺伝的要因などが関連するが,近年では,腸管感染症後に発症するpost-infectious IBSの研究によって,腸管の軽微な炎症や免疫異常がIBSの病態に関わっていることが報告されている.

B診断

・IBSの診断にはRome基準が世界的に汎用されており,現在はRome Ⅳ基準が用いられている.本基準では,「過去3か月間,1週間につき1回以上にわたって腹痛があり,①排便によって症状が軽減する,②排便頻度の変化と関連している,③便形状の変化と関連している,の3項目のうち2つ以上の項目を満たし,症状が少なくとも6か月前から出現している」ことがIBSと定義されている.患者の糞便の形状や割合によって,下痢型,便秘型,混合型,分類不能型に分類される.

・Rome基準はsymptom-based criteriaであり,IBSの診断に際しては器質的疾患の除外に留意すべきで

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