今日の診療
治療指針

下痢
diarrhea
今川 敦
(今川内科医院・院長(香川))

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治療のポイント

・急性と慢性の下痢があり,それぞれ原因別に対処する.

・経口摂取の可否,水分および電解質喪失の程度で補液を行うべきかどうかを判断する.

・強い腹痛や血便・発熱を伴う場合には,早めの対応が必要である.

◆病態と診断

A病態

・下痢は,水分を多く含む泥状もしくは水様の糞便を排泄することであり,排便回数が多い状態を示す.

B診断

・急性下痢では,感染症(ウイルス性,細菌性)や薬剤投与による影響を考える.

・慢性下痢では,生活習慣,炎症性腸疾患,悪性腫瘍,機能的な要因(過敏性腸症候群など),その他(甲状腺機能亢進症など)が考えられる.

・問診(食事内容,飲酒習慣,内服薬,便の性状,海外渡航歴,同居人の症状)から鑑別診断を行い,次いで侵襲の少ない順に検査(便培養,採血検査,大腸内視鏡検査もしくはCT検査など)を考慮する.

◆治療方針

 経口摂取が困難な場合は細胞外液の補液を,経口摂取可能であれば塩分・水分補給に努める.軽症の場合は整腸剤投与を行い,積極的な止痢剤の投与は原則不要である.原因により対処法が異なるため,それらの検索が必要である.

A急性の下痢

 急性の下痢の原因は感染症が最も頻度が高く,ウイルス感染と細菌感染に分類される.ウイルス感染(ノロウイルス,ロタウイルスなど)は冬場に発生することが多く,家族内発生の有無や便の性状から推測する.一方,細菌感染は夏場に多く,食中毒の原因となる.汚染された食品や水分の摂取が要因で,サルモネラ菌や腸炎ビブリオ,血便を伴う病原性大腸菌やカンピロバクター菌などの原因菌がある.いずれの場合も,治療とともに感染を広げないような対策が必要となる.便や吐物の扱いは慎重に,さらに手洗いを促す.基本的には保存的に対応するが,症状が強く,細菌感染が疑われる場合は,抗菌薬投与や入院加療が必要となることもある.

 一方,薬剤性の下痢には,下剤の過剰投与,抗菌薬

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